保育安全ガイドライン

非常災害時における保育施設の避難計画と実践的な訓練方法

Tags: 災害対策, 避難訓練, 危機管理, 安全管理, 保育施設

予測不能な非常災害に備える重要性

保育施設において、地震、火災、風水害などの非常災害は常に発生のリスクを伴います。これらの災害は予測が困難であり、発生時には園児の安全確保が最優先課題となります。日頃からの入念な準備と、具体的な計画に基づいた実践的な訓練が、万一の事態において被害を最小限に抑える鍵となります。

非常災害時避難計画の策定における要点

非常災害時における避難計画は、人命を最優先とする基本原則に基づき、現実的な状況に即して具体的に策定される必要があります。計画策定にあたっては、以下の点を考慮することが重要です。

1. 施設が直面しうるリスクの評価

地理的条件や建物の構造などを踏まえ、発生しうる可能性のある非常災害の種類(地震、火災、津波、河川の氾濫、土砂災害など)を特定し、それぞれのリスクを評価します。このリスク評価は、避難計画の基礎となります。

2. 避難場所と避難ルートの選定

3. 安否確認及び情報伝達体制の確立

4. 避難時に必要な物品の準備

救急用品、飲料水、非常食、毛布、懐中電灯、携帯ラジオ、おむつ、ミルク、連絡手段となる携帯電話やバッテリーなど、避難生活に必要な物品のリストを作成し、取り出しやすい場所に備蓄します。リストは定期的に見直し、消費期限などを確認します。

5. 特別の配慮が必要な園児への対応

アレルギー疾患を持つ園児、障害のある園児、乳児など、特別な配慮が必要な園児に対する避難時の支援方法、必要な物品、避難場所でのケア方法などを具体的に計画に盛り込みます。

実践的な避難訓練の実施とその質向上

策定した避難計画は、実践的な訓練を通じて検証され、継続的に改善される必要があります。単に避難行動を確認するだけでなく、様々な状況を想定した訓練を実施し、対応能力を高めることが重要です。

1. 多様なシナリオでの訓練実施

火災や地震といった単一の災害を想定した訓練に加え、複数の災害が同時に発生した場合(例: 地震後の火災)、夜間、休日、保育時間外、送迎バス運行中など、様々な時間帯や状況を想定した訓練を年間計画に位置づけ、実施します。引き渡し訓練も、災害時を想定した実践的な形で行うことが重要です。

2. 訓練の効果測定と振り返り

訓練を実施するだけでなく、訓練後に必ず振り返りを行います。避難にかかった時間、職員の動き、園児の様子、情報の伝達状況などを記録し、計画通りに進まなかった点や改善が必要な点を洗い出します。職員全体で共有し、意見交換を行う場(反省会など)を設けることが効果的です。

3. 計画・マニュアルの継続的な見直し

訓練の結果や、地域の状況の変化、関係法令の改正などを踏まえ、避難計画やマニュアルを定期的に見直します。問題点や改善策を反映させ、常に最新かつ実践的な内容に更新しておくことが重要です。

4. スタッフの役割理解と訓練への参加徹底

非常災害発生時には、職員一人ひとりが自身の役割を正確に理解し、冷静に行動することが求められます。日頃からマニュアルを共有し、訓練への全員参加を徹底することで、組織全体の対応能力を高めます。新任職員への研修も重要です。

保護者および地域との連携強化

非常災害時における安全確保には、保護者や地域との連携も不可欠です。

まとめ

保育施設における非常災害時の安全管理は、非常災害時避難計画の策定と、それを検証・改善するための実践的な訓練の継続的な実施によって成り立ちます。予測不能な事態においても、園児と職員の安全を確実に守るためには、組織全体の高い意識と具体的な行動計画が不可欠です。計画を「策定して終わり」ではなく、訓練を通じて「使える計画」へと磨き上げ、全職員で共有し、保護者や地域とも連携しながら、不断の努力を続けることが求められます。